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運命の出会い(その1) [はじめに]

 1980年9月、朝日連峰を縦走したときの話である。珍しく会社の同僚と二人での山行だ。初日の朝、米坂線小国駅から朝日平へ北上する路線バスに乗る。終点まで乗る客は、我々の他に一人の老人がいるのみだった。その老人も山登りらしく、小さなリュックを背負い、杖がわりにピッケルを持っていた。まだ、登山用のストックが流行する前のことだ。林道を歩き始めれば、その老人も我々の後をついて来る。

 お互いの行き先を教え会い、我々が朝日連峰縦走だと知ると、「私もお供させてください」と頼まれる。荷物の違いもあり、問題なかろうと承諾してしまった。これより助さん格さんと黄門様よろしくの山歩きが始まる。この方がその後、山日記の中で時々顔を出す、新潟のS翁だ。

 カクナラ小屋から大朝日岳への登りでは、先にヒョコヒョコと登って上で我々が追いつくのを待っている。そんなことの繰り返しで、その時は少々イラっときた。ただ、我々に合わせるために無理をしていたようで、我々との山から返って来ると二三日は死んだように眠っている、とS翁の奥様がずっと後に仰っていた。
 朝日連峰を縦走した時のS翁は70歳、それから5年ほどは、年に1度くらい、飯豊、巻機山-白毛門、八幡平-岩手山、などをS翁と共に縦走した。その後も、温泉ツアーや日帰りの雪山登山などで親交を深めた。93歳で天寿を全うされて早7年になる。
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